COLUMN

育てる菓子、シュトーレン

コラム201712クリスマス・シュトーレン.jpg

熟成させるケーキがあるのを、知ったのは、
大人になってからのこと。
結婚したばかりの友人宅を、訪ねたときのことでした。

「ちょうどよかった! 今日が食べごろなの」
そういって、きれいな缶のなかから、
大事そうに包まれたケーキを取り出し、
夫婦でうれしそうに眺めていたのを、思い出します。

結婚式の日に、ブランデーの小瓶とともにもらい、
「3日に1回、これをケーキにふりかけて、育ててね」
といわれたのだとか。
その大切なケーキを、私も一緒にいただいたのでした。

1か月以上も置いたケーキを食べるのは、初めてのこと。
こわごわ口にしたので、じつは味をよく覚えていません。
でも、ふたりが「おいしい!」と言って、笑顔を輝かせていたのが、
とても印象深く、昨日のことのように思い出されます。

日本では、クリスマス・ケーキといえば、
生クリームやフレッシュ・フルーツをたっぷり使った、
新鮮な生ケーキが主流です。

ところがヨーロッパでは、ドライフルーツやナッツを入れた、
保存食のようなケーキを、1か月くらい前につくり、
クリスマスまで寝かせて、熟成させるのが、伝統なのだとか。

イギリスのクリスマス・プディングや、ドイツのシュトーレンが、そう。
真っ白な粉砂糖をふった、パンのようなシュトーレンは、
日本でも最近、パン屋さんやケーキ屋さんで、よく見かけますね。

コラム201712雪の庭.jpg

初めてシュトーレンを食べた時は、その甘さにびっくりしたものです。
でも、薄くスライスして、少しずつ食べると、
熟成した生地とドライフルーツの味や香りが、口のなかでひろがり、
その余韻の深さに、忘れられないお菓子になりました。

時間をかけて、ゆっくりと味わう、
大人向けのケーキといえるかもしれません。

熟成させるというのは、時をかけて育てるということ。
よく知られているように、チーズやワインは、
"エイジング"によって、深い味わいが生まれます。

そしてそれは、住まいである家にもいえるのではないでしょうか。
時間をかけて、大切に使っていくことで、
家は、家族にとってかけがえのないものとなります。
やがてそこに、落ち着いた輝きが、生まれてくるように思うのです。

......soraiでは、お客様の"暮らしに寄り添う家"をご提案しています。
あたたかみのある木や自然素材を中心に、ご希望に合わせた仕様と設計が可能です。
どうぞ、お気軽にご相談ください。