香川県の穏やかな山並みが折り重なる土地に建つ、ひとつの家。
ここには元気いっぱいの5人姉弟が走り回る、にぎやかで温かい暮らしがあります。
奥さまの実家の敷地で、上京するまで住んでいた母屋をどうするか。
そこから、ご夫婦の家づくりは始まりました。


当初は、母屋をリノベーションする予定でした。
けれど、soraiに相談すると「費用面を考えると新築の方が合理的です」と伝えられ、
今の暮らしに合った形でこの土地の良さを生かしたいと、新築へと舵を切りました。
◇”外からの視点”が気づかせてくれた風景の価値
北海道出身のご主人にとって、四国での暮らしは初めての経験でした。
初めて見た里山の風景に、ご主人は驚いたと言います。
丸みのある山が連なり、生活圏のすぐそばに山の稜線が見えるのどかな景色。
「地元の人には当たり前でも、外から来た自分にはこんな贅沢はないと感じました。」
その言葉が、この家づくりの核になっていく。


◇木の家、大きな窓、そして庭——こだわりがつながる
ご主人が重視したのは「木の家であること」。
何社かまわる中で、自然素材の木の扱い方・表情の引き出し方が一番しっくりきたのがsoraiだったと言います。
ゼネコンも視野に入れていたが、最終的には「ここの土地のことをよく知っている地元の工務店に任せたい」という気持ちに。
さらに、soraiが造る香川の原風景を切り取るような”大きな窓”にも惹かれたそう。
のどかな山々の景色をどの角度からも感じられるようにと考えていくと、人が住まう導線や光の入り方が導くように L字の間取りへと落ち着いていきました。


「外構まで含めて”家”なんですよね」とご夫婦は言う。
将来を見据えて植物は背丈が高くなり過ぎない種類にし、手を抜かず丁寧に整えたアプローチは、家へ帰るたびにやわらかく迎えてくれます。
その言葉どおり、暮らしに静かな奥行きを与えています。
そして、この家を語る上で、欠かせない存在がもうひとつある。それが、家の一角に設けたサウナだ。
浴室の隣に設置している小さめのサウナは、一人で楽しむには十分だと言います。
家づくりのプラン段階では、実は「削る候補」のひとつだったが不思議と最後まで候補から消えなかった。
完成から3年。
「一度もメンテナンスしていないのに、カビも一切生えてません。家の中で一番きれいかもしれません」とご主人は笑う。
子どもたちが寝静まった夜、静かに汗を流す時間は、外へ出かけなくても気持ちが整う、ささやかな贅沢だ。
結果的に残ったサウナは、この家が大切にしている”余白”を象徴する存在になっています。


◇暮らして3年。住んでから気づいたこと、うれしい誤算
「もし次に建て直すとしたら、キッチンの広さを確保したいなと思いますね。」とご主人。
家を建てている頃は料理をする機会が今ほど多くなかったからこそ暮らしてみて気づいた”自身の変化”でもある。
一方で「これはよかった!」となるポイントはいくつもありました。
最後まで半信半疑だったソファースペースは、天井が少し低くて奥まったつくり。
はじめは想像がつかなかったが、ふたを開けてみるとその”こぢんまりとした落ち着き”が家族が自然と集まる場所になりました。
天井の低さも、実際に座って窓の先の風景を見ると、驚くほどの開放感をもたらします。
にぎやかに暮らす日常の中で、その“落ち着く居場所”は、家族をやさしく受け止めています。
そして、奥さまのひらめきで生まれた小窓。
料理をしながらでも子どもたちの様子が見えるように、と建築士に相談して実現したもの。
形は、建築士の提案でアーチ型に。
「できた時には建築士さんと”これはつくってよかったね”って話したんです(笑)」と奥さまは振り返る。
小さな窓は、空間を仕切りながらも、家族の気配をやわらかくつなぎます。


◇これから家を建てる人へ
「もちろん予算には限りがあるけど、最初は理想や夢を全部詰め込んだプランを考えて、それから削っていくのがいいと思います」と奥さま。
真っ先に削る予定だったはずのサウナが残ったことに、ご夫婦は笑う。
しかし、削る予定だったサウナが残ったのは、実は本当に大切にしたかった証だった。


「あとはプロの提案に素直に乗っかるのも大事だと思いました」とご主人。
経験を積んだ建築士の視点に、いい意味で身をゆだねること。
長年その土地と家づくりを見てきたプロの視点は、住んでからじわじわと”正しさ”が分かってくる。
その先に、時間をかけて好きになる家が待っています。
のどかな山々の風景とともに、家族の時間を育てていく住まい。
ここには、土地の記憶と新しい暮らしが、静かに重なり合っています。
