COLUMN

秋のタルト

202209イチジクのタルトWEB (002).jpg

まだまだ暑い日が続きますが、夜風が少し涼しくなりましたね。
昼間に吹く風も熱風のようだったのが、おだやかになって、
ときには、さわやかな風が通っていくことも。
気温が下がったのを実感すると、秋が近づいているな...と思います。

―秋来ぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞ 驚かれぬるー
「秋が来たと、はっきり目に見えるわけではないけれど、
吹く風の音に秋の訪れを感じて、はっとさせられましたよ」

平安時代に藤原敏行が詠んだ和歌で、『古今和歌集』に出ています。
秋の気配を感じると、この歌をいつも思い出します。

子どもの頃に、学校の教科書で読んだときは、
「風で秋がわかるなんて...」と思っていたのですが、
大人になったある日、この歌を実感する出来事がありました。

まだ紅葉も始まっておらず、夏の気分が抜けきっていなかった頃。
外に出ると急にさーっと強い風が吹いて、雨戸をバタバタ揺らしていったのです。
その風はひんやりと冷たく、しかも風のあとの静けさが、夏とはまったく違っていました。

「ああ、秋だ!」と思うとともに、例の和歌が浮かび、
詠み人は、こんな気持ちだったのかと合点したのです。
そして自然は、昔も今も変わらないのだと、しみじみ感動しました。

202209ナツスミレWEB (002).jpg

この和歌は立秋に詠まれたそうですが、夏の暑さが厳しい現代では、
立秋を過ぎても、秋風はなかなか吹きそうにありません。

それでも産直市では、ブドウやイチジクなど初秋の果物が並んで、
季節が秋へと移っていくのを、教えてくれます。
そのうちクリや柿も出て、秋の恵みであふれんばかりになることでしょう。

これからの季節は、お米が稔り、果物や木の実もみのって、
「恵みの秋」という言葉が、本当にふさわしい季節です。

自然の恵みに多くを頼っていた時代は、いまよりずっと、
秋の実りを喜ぶ気持ちが強かったはず。
秋は、大地に感謝し、希望をつなぐ季節だったことでしょうね。

そんなことを考えながら、産直コーナーで買った
"ジャム用いちじく"を使って、タルトをつくりました。
サクッと焼いたタルト生地に、手作りのカスタードクリームをのせ、
切ったいちじくを並べていきます。

スモモのジャムの赤いソースをかけたら、ちょっと華やかな印象になりました。
生のイチジクとカスタードクリーム、バターと小麦粉の生地。
それだけを組み合わせたシンプルなタルトは、素朴な味わいですが、
素材のおいしさがギュッと詰まっています。

秋の恵みに感謝しながら、いただきましょう。


......soraiでは、お客様の"暮らしに寄り添う家"をご提案しています。
あたたかみのある木や自然素材を中心に、ご希望に合わせた仕様と設計が可能です。
どうぞ、お気軽にご相談ください。