COLUMN

濡れ縁でひとやすみ

2111濡れ縁WEB (003).jpg

いつの頃からか、「濡れ縁」という言葉をあまり聞かなくなりました。
屋根のかかっていない縁側のことを、濡れ縁と呼びます。
いまでいう、ウッドデッキのようなものでしょうか。

室内から外につながった、板敷きの場所。
内でもなく、外でもない、この空間を、
日本人は"縁(えん)"と呼んで、重宝してきました。

縁側でお茶を飲む、というと、
のどかな田舎での、ゆったりした時間を思い浮かべます。

昔は、外に井戸があったり、薪で煮炊きをしたりと、
家事でも、外に出ることが多かったはず。
田畑があれば、なおのこと外仕事が多くなります。

そんなとき、だれかが訪ねてきたら、
靴を履いたまま、ちょっと腰をかけて、
おしゃべりしたくなりますよね。

室内に入るときは靴を脱ぐ、私たちの生活習慣では、
縁側というのは、素晴らしい空間です。

いちいち靴を脱ぐほどではないけれど、
ちょっとひとやすみや、おしゃべりをしたいとき。
すぐに腰をかけられる縁側は、なんと便利なことでしょう。

2111ツワブキWEB (003).jpg

築45年のわが家にも、濡れ縁があります。
軒下にありますが、浅い軒で雨に濡れやすいせいか、
「濡れ縁」と呼んでいました。

角材の狭い面を上にして並べ、すき間を広くとっていたのは、
濡れてもすぐ乾くように、との配慮だったのでしょう。
こまめに塗装していたので、45年間もちましたが、
ついに傷みが激しくなり、作り直すことに。

新しい濡れ縁は、ウッドデッキのように、
材を横に渡して、つくってもらいました。
やわらかなスギ材は、腰をかけると、
いつまでも座っていたくなる心地よさ。

座った場所から、庭を眺めていると、
亡き父が、よく濡れ縁に腰かけて、
庭を見ていたのを思い出します。

コーヒーを飲みながら、庭を眺める時間は、
きっと幸せだったのでは...と想像します。

しばらく濡れ縁には、座っていませんでしたが、
新しくしたのを機会に、これからはときどき、
庭仕事のあいまに、ここでひとやすみしましょう。

風を感じ、鳥の声を聞きながら、
濡れ縁に座って、お茶を飲んでいると、
楽しそうに庭木を剪定していた父の姿が、目に浮かびます。


......soraiでは、お客様の"暮らしに寄り添う家"をご提案しています。
あたたかみのある木や自然素材を中心に、ご希望に合わせた仕様と設計が可能です。
どうぞ、お気軽にご相談ください。